![]() 以前コミックストーリー作家(マンガ原作者)の、剣名 舞 先生の玉稿を拝読させて頂く機会がありました。 「キャラ設定」「第一話のストーリー」「今後の展開への提案」などからなる、雑誌連載に向けての企画書です。 一読してまずびっくりしたのが、この作品の「狙い」の提示の明確さでした。 素人はつい自信の無さから自分の作品の狙いを語るとき「〜みたいな」とか「〜な雰囲気の」と、お茶を濁してしまいがちです。 でもそれでは共同作業である出版業では、作品企画の打ち合わせがスムーズに進みませんよね。 “「企画」は「叩き台」だ、どんな注文でも出してくれ” というプロ意識があるからこそ、すべてが明確に提示された文章になるのでしょう。 ――まさにプロ魂! なんか、原稿用紙からオーラが出てました。 「どんな注文でも出してくれ!」 ……言うのは簡単ですが、実際描くとなるとこれがもーホントに大変なんです。 連載企画の持ち込みでも、連載が始まった後の一本ごとの打ち合わせでも、編集部からのダメ出しの連続。ボツの嵐です。 「だれの挑戦でもうけるっっっ!!」のアントニオ猪木先生ではありませんが、まるで勝ち抜きトーナメントのように、担当や編集長との連戦を勝ち抜かなくてはいけないのが、雑誌に漫画が掲載されるまでの作家が通る道のりです。 しかも、新作の企画持ち込みの場合はその間は無収入……。 稀に「ネーム料」とか支払ってくださる(新人に多い)太っ腹な出版社もありますが、これはほぼ例外的なお話。 ですから、独り身の新人ならまだ気が楽ですが、妻子を背中にしょっている方のプレッシャーたるや相当なもの。ものすごくハードなバトルロードとなります。 ――ブタ丸父ちゃんありがとう! と、大黒柱に感謝しつつ、話題を先に進めましょう。 「企画」は「叩き台」。 打ち合わせが始まると、何日もかけアイディアを振り絞った作品に、次から次へ編集部からの直しが入ります。 これは漫画雑誌だけの話ではなく、小説などでも同じだと思いますが、山のような捨てネーム(原稿)が、累々と戦士の屍の山のように積み重なっていきます。 よくこのような捨てネームやボツ原稿を描く事を “無駄” と言って避けようとする作家志望の方がいらっしゃいます。でもたとえ才能がありデビュー前はそれができたとしても、プロになってから必ず “ボツ” の洗礼を受ける時がおとずれることは覚悟しておいてください。 それに、書いた物が無駄になることは決してありません。必ず作家のスキルアップにつながるのです。 ――と、いい話でまとめたいところなのですが………。 山あり、谷あり、無駄骨ありが 厳しいプロの世界ホントのところです。 屍の山を乗り越え、何回も打ち合わせを重ね、やっと編集さんのOKが出れば、連載企画持ち込みの場合は編集会議待ち、となります。人事を尽くして、天命を待つのみ……です。 (その後の展開にまつわるエピソードはまた別の章で書きますね) 連載ネームの場合は、編集長の最終チェックを受け、後は描くだけ! ここまで来ればブタ丸母ちゃんも一安心、だと思っていたら……。 実は、時と場合と、編集部によって、もう一波乱あったりするのです。 これは今を去ること××年前、某誌で父ちゃんが連載作品を描いていた頃のお話しです。 ━━ 某年六月・夜 ━━ ――TURUUUUUU 「はい、アラいつもお世話になっております♪ お待ち下さ〜い 父ち〜ゃん電話だよ編集部から」 「ほーい、あ、どーも」 「あ、あの、先生……申し上げにくいんですが……」 「え? なんですかぁ」 「編集長にネーム見せましたら……」 「ハイハイ、修正なら遠慮なく言ってください。どこ直すんです? どんな注文でも出して下さい、プロですから!」 「あ、あの、編集長に見せましたら……あのすいません怒らないでくださいね」 「な、なんです?(少し不安になってくる)」 「『あ、この方向の話はいらないから』……て、言われまして」 「……え?!」 「すいません! すいません! すいませーーーん!」 「それって、どういう……」 「すいません! すいません……別の話を書いて…下さい」 「えええぇぇ〜〜〜〜っっ!!!」 出たぁぁぁっ! 編集長必殺のちゃぶ台返しぃぃ〜〜〜!! 何回も直しをくり返し、ボツネームを積み上げ、しかも締め切りにも余裕のなくなった時点での大どんでん返しです。こんなことは初めてでした。 「『あ、この方向の話はいらないから』……って、なーーんじゃそりゃあああああああっ!!」 「すいません! すいません! すいません! 頑張って次描くから、そんなに怒んないでよ、母ちゃん……怖いから」 「しかも『ご無理でしたら一回休みますか?』だって? 原稿料はでないんだろっっ?! ごはんが食べられなくなるじゃろーが! 貯金なんて一銭も無いぞ〜〜〜!!」 「……貯金してくれよ頼むから…」 「……何?」 「すいません! すいません! すいません!」 気がつけば、なぜか家では逆に謝りまくっている、気の毒なブタ丸父ちゃんでした。 それにしても、作品の方向性についての確認などは、ちゃんと事前に編集長と連絡をとっておいてもらいたいものです。 締め切りギリギリで練り上げたネームがひっくり返されるのは、体力的にも精神的にもこたえますから。必死でネームを完成させたのに、「やっぱこれいらなーい」っていうのは、ルール違反です。話が通ってませんでしたじゃすまされません。怒っていいぞ、ブタ丸父ちゃん! 「父ちゃん! 編集部に文句言いにいっといで!!!」 「え〜〜〜〜そ、そんなこと言えないよぉ」 「なら、アタシが行ってくるよっっっ!!!」 「それだけはやめて〜〜〜必ず締め切りまでに描くから、かんべんして母ちゃ〜〜ん…おねがいですぅ、エグエグ……」 「――死ぬ気でやりなっ!」 「は、はーーい…」 ――かくして屍の山は全て “無駄死に” となったわけです。 まあ、こういう事はめったにありませんが、編集部によってはタテ・ヨコの連絡がとれていないということは、よくあります。他の編集者や編集長との連携が悪いので編集者が、現在連載中の作品でも自分の担当作品以外把握していないのです。 ワンマンで風通しが悪いのか、内部分裂が進んでいるのか……。 とにかく一冊の本を作り上げるにあたって編集部全体の団結がとれていない。どんな本を作りたいか、そのために自分の担当の作家にどんな作品を描いてもらうのか。一番基本的な意思統一が出来ていないのは困りものです。とにかく、言うことがコロコロ変わるし、前言に責任をもってさえくれません。 その結果、作家がちゃぶ台返しくらったりとか、一冊の本におなじネタがいくつもカブったりとか、色々悪影響が出る訳で……。 読んだ事ありますよね? そんな一冊。 こんな編集部と仕事をするときは、とにかく何事もこちらから事前に再確認を入れるのが、賢明な防衛策でしょう。 ちなみにこの時は、ブタ丸父ちゃん怒濤の早業で次のネームを仕上げ、無事、作品は掲載されました。 プロの鑑です。 (ブタ丸母ちゃんが怖かっただけというウワサも……。) ≪今回の教訓≫ 団結の弱そうな編集部には気をつけよう +++ 1.END +++
「そろそろキレちゃっていいと思うよ、今回」 ――船頭多くして船山に登る です♪ お楽しみに! |