![]() ![]() 連載第1話スタートから、なにかと本調子の出なかったブタ丸父ちゃんでしたが、第4話を描きはじめたころやっとペースがつかめ、ギャグパワーが戻ってきました。サービスシーンもたっぷりで、苦情もちらほら編集部へ舞い込んでいたようです(笑)。編集部の皆さま、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。 「♪ドドメ色の恋は、おなべで煮たジュースの臭い〜♪ クサイ クサイ 本当にクサイ〜♪ どんだけクサイか嗅いでみな〜♪」 一部で評判になった、このみょーな歌が登場したのもこの頃です。 もちろん厳しいネームの直しは続いていましたが、編集長からのリクエストのあったギャグを載せたりと、楽しくコミニケーションをとりながら連載を続けることができていました。 そんなある日のこと………。 ―― 某年某月・昼下がり ―― 「母ちゃん、母ちゃん! たいへんだぁ〜〜!!」 長男のブタ丸が、某・全日本売り上げ発行部数ナンバーワン怪物少年誌を手に、テレビを見ていたブタ丸母ちゃんの所へ転がるように駆け寄ってきました。 「なになになに! どーしたブタ丸! 今ドラマの再放送がいいトコなんだよ、たいした事じゃないなら後にしとくれよ」 「たいしたことだぞ! これみろかーちゃん!!」 「なんだよ…あ、このギャグマンガ? ブフフ、けっこうおもしろいんだよねーこれ」 「笑ってるばやいじゃないぞ! ここ、ここ! このギャグ見てよっ!!!」 「え〜、もーめんどくさいね〜。はいはい、どれどれ………あ、こ、こりゃ……!」 不機嫌にブタ丸の指差すページをのぞいたブタ丸母ちゃん、みるみる目がカッと見開き、スゴイ形相に変わっていきます。
「父ちゃんの今回描いたばっかりのギャグに そっくりだ〜〜〜!!! えらいこっちゃ〜〜〜!!!」 「どーしたの母ちゃん大きな声出して……」 母ちゃんの大声に驚いて、ブタ丸父ちゃんこと漫画家の「トンコツ・とん太」先生が眠い目をしょぼつかせながら二階の寝室から降りてきました。 「父ちゃん! ちょっとこれ見てみな!」 「なにこれ新連載? 面白いの?」 「………そうじゃなくってさ」 とん太先生はけっこうマンガの好き嫌いが激しくて、実はこの超メジャー誌を今はほとんど読んでいないのです。好きな作品は単行本で読むので、本誌を手に取る事はめったにありません。 「あ、この作家さんは知ってるよ。昔別冊の方で連載してた人でしょ。この話がどうかしたの?」 「だーかーらぁ〜、ここ見てよ、ここ!」 「起きたばっかりだから、よく見えないよー」 「もー! じれったいね〜!」 「父ちゃん、よく見ろ! いちだいじなんだぞ!」 「兄ちゃん、なになに? どーしたの?」 「お前はあっちいってろ!」 「なんだよ! くそたれ!」 「なにっ! 弟のくせになまいきだぞ!」 「やかましい! ケンカするなっっっ!! あ、父ちゃん! コラ! どこいくのさっ!!」 「……まだ眠いのに、うるさいしー」 「アンタの事なんだから、 ここに座ってちゃんと 見なっっっっっ!!!!」 「ブヒ〜〜〜ッ! ご、ごめんなさい! 食べないでぇぇ〜〜」 ![]() いつも騒々しいブタ丸一家です。 少しちびったパンツを気にしながら、父ちゃんはやっと雑誌に目を通しはじめました。 「……………………」 「どう? 父ちゃんがこないだ描いたギャグにそっくりでしょ!」 「……似てるけどさ、偶然じゃないかな」 意外に薄い反応に、母ちゃんとブタ丸はカクッとちょいゴケ。 「父ちゃん、パクリだぞこれは! おちついてるばやいじゃないぞ!」 「ブタ丸、めったな事言うな。似たネタがかぶるなんてことは、よくあるんだよ」 「だってこの人のギャグ、ほとんどほかのひとのをもってきてるぞ! オレ毎週読んでるからしってるぞ!」 「そういう作風なんだよ」 インスパイアとかコラボレーションとかオマージュとかパロディとかアンソロジーとか、とにかくいろいろな言い方がありますが、この作家さんはそういった方向のギャグを得意としている方です。正直ちょっとツボで、楽しく読ませていただいていました。 作風としての好みはいろいろあることとは思いますが、一応認められている描き方です。でも今回の件には、それとは別に色々好ましくない問題があったのです。 「父ちゃん、ちゃんと編集部に連絡入れときなよ」 「えー、そんな大騒ぎするほどの事じゃ……偶然だよきっと」 「父ちゃん、発売日が近すぎるんだよ。こっちは月刊誌だし。読者がどっちが先に出た本か、判断できにくいだろ」 「――あ! そ、そうか…分かったすぐ電話しとく!」 発売はこちらが早くて、タイミング的にこちらの作品を読んでから週間原稿の執筆・校了・出版を行うことができる時間は、あちらにだけは十分あったでしょう。 ――でもこちらは月刊誌。 しばらくすると一緒に本が書店に並んでしまいます。 そうなると、どちらがどちらのマネをしたのか、出版事情に詳しくない一般読者には分かりません。 さらに週刊誌が次の号になっても月刊誌のこちらはまだ書店に並んでいます。 読むタイミングによっては、こちらがパクったと思う読者もいるでしょう。それだけはちょっと勘弁してもらいたいところです。 「母ちゃん、電話しといたから」 「そうかい、で、担当さんなんか言ってた?」 「ううん、別に……分かりましたって言ってただけ」 「ふーん」 ちょっと冷たい反応に思われるかも知れませんが、とてもデリケートな問題なので、編集部の口が重くなるのもうなづけます。自ら作家の盾になろうという男気のある編集さんが居たのは今は昔。刃物まで持ちだして熱く作家とやり取りをした編集者は(それはそれでちょっとご遠慮したい気もしますが)もう伝説になっています。 「……まあそんなモンかね。あ、父ちゃん、パンツは自分で洗っときなよ!」 「ヒイィィィン、わ、わかりました〜〜〜」 どこに行っても、いまひとつ大事にされないかわいそうなとん太先生でした。がんばってるのにねー。 ![]() ついに念願の納豆コーヒーゼリーサンドを友人に送ってもらった母ちゃん。他の家族がだれも食べなかったので、それを夜食用にキープしておいて完食したのです。 「あ、そうだ! メールチェックしなきゃ。丸2日ほったらかしだからえらいことになってるよ、きっと」 「あーあ、迷惑メールなんとかなんないかねぇ…当選しました! だってさ、まだこんな手使ってるトコあるんだ。お! ブピ助からメールだよ、嬉しいねぇ♪」 ブタ美、おっひさ〜(^_^)v 相変わらず気合い入ってるかーー(笑) ちょっと事件だから連絡!!! アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ ! ↓↓↓↓↓↓↓ ここ見るべし!!! 「なんだろね、どれどれ、クリックっと……ん〜何ぃぃぃぃ!!!」 中学からの友人の連絡は、今回の出来事でブタ丸母ちゃんが頭の中に描いていた “最悪のシナリオ” が現実になりつつあることを告げていたのです。 それは、とあるマンガ感想・批評サイトの記事でした。 「トンコツとん太・萌えジョ太郎、お下品ギャグでニアミス! こんなにそっくりぃ〜?」 やはりその記事では、発表時期の前後関係については一切触れられていませんでした。「どっちがどっちをマネたのやら」という内容になっています。 「“最悪のシナリオ”第1段階だね…こりゃ」 母ちゃんは頭を抱えました。 ため息をつきながら、先月の事を思い出します。 このニアミスギャグを父ちゃんが思いついた時のエピソードです。 ――トン トテテ トン トン トン♪ いつになく軽快な足取りで階段を下りてきたブタ丸父ちゃん。 小さな目がキラキラと輝いています。 (お〜〜や、なんかいい事あったかね! ひょっとして…増刷!!) 「母ちゃ〜ん♪」 「ハイハイハイハイ、ナニナニナニナニ? どーしたのかなぁ♪」 「あのね〜〜♪」 (きたきたきたよ〜〜〜! いったい何部増刷かかったのかなー!!!) 「すっごい、下らないギャグおもいついちゃった〜〜〜♪」 ――ズルッ 思いきりコケる母ちゃん。 「あーそうかいっっっ!!!」 「……母ちゃんナニ怒ってんの?」 「べっつにぃー! 怒っちゃいないよ!! ナニ! きいてあげるから言ったんさい!! そのギャグ!!」 「……そう? ホントに怒ってないの? じゃあ言うよ、あのね……」 一旦は脱力しながらも、母ちゃんは嬉しそうに思いついたギャグの説明をする父ちゃんを見つめていました。子供のように楽しそうにおバカなギャグについて語る父ちゃん。ホントに作家さんってカワイイよなーと、心底和むひとときです。 おもしろいアイディアを思いついた時の作家さんって、ホントにいい顔するんですよ。 私がお手伝いに行っていた事のある、弓月師匠もそうでした。 普段口数の少ない師匠が、瞳をいたずらっぽく輝かせて 「これさ、見る?」 と、ネームを見せてくれるのが、そんな時です。 そして読み手が笑うと、本人もものすごくすてきな笑顔になります。 ああ、この人ホントに描く事が好きなんだな……としみじみ感じる一瞬でした。 思いついた時、あんなに嬉しそうに話してくれた、父ちゃんのそのギャグが…… 「盗作」 みたいな扱いで晒されています。 もちろん「?」マークも付いてるし、表現も「ニアミス」とソフトかつ微妙な言い方ではありますが……。 でも、打てる手はなにもありません。 じたばた言い訳を書込んでみるのは自爆技。 ただ、成り行きを見守るしかない母ちゃんでした。 “納豆コーヒーゼリーサンド”について知りたい方はこちらから♪ (注)ホントに意外と美味しいらしいです。問題はビジュアル? 情報提供 toku さん(HP) 「ねー、ちょいと! 父ちゃんってば!」 「えー、な〜にぃ」 「あ〜もう! 気が抜けるねぇ……例のあの問題だよ! 父ちゃん的には何かアイディアとかないの? 善後策の!」 「ん〜、ちくわチーズでいいよー」 「晩飯のおかずの話じゃなあ〜〜〜 〜〜いっっっ!!!!」 「ひぃぃぃぃぃっっっっ〜〜ごめんなさ〜〜い」 いろいろ気を廻して考えているうちに、すっかり不安になった母ちゃん、ブタ丸父ちゃんに相談してみたのですがこの反応……。 どこまでものんびりマイペースのとん太先生です。 「いいかい父ちゃん! 盗作問題はかかわっちまったらロクなことになんないんだよ、ただでさえ! 最悪のシナリオでは連載打ち切り、仕事を干されるってことも有りうるんだからね! のんびりまったりしてる場合じゃ……」 「あ、そういえばまた別のサイトで話題になってたよ」 「え! どこだい! チェックしとかなきゃ!」 「え〜と……」 「ふむふむ…え゛!!! な、なんだってぇ〜〜〜!!!」 「なにかもんだいあるの?」 その記事にはとんでもないことが書かれていました。実はこの2人の作家がこのネタを描く前に、同じネタを別の作家さんが描いていた…と、いう新情報が投稿されていたのです。 「だからさー、オレの作品が盗作されたわけじゃないって可能性が大きくなったんだと思うんだけど……」 「もーそーゆー問題じゃないんだよ!!! のんきだねぇ父ちゃんは!」 「あ〜あ…最悪だよ、ネタ被ってたのか……」 たとえ読んでないしマネしてないと主張しても、それがかなり前の作品だとなると……。 「読んだの忘れちゃってるけど、潜在意識に残っていて知らずにマネしたんじゃないの?」 ――と、言われてしまえば反論しようもありません。 こういう事が起こらないように他の作品をできるだけ目を通すようにしたりと気は使っていたのですが……。後でチェックできるように、できるだけ単行本も買うようにもしていますが、どうしたって個人でやるのには限界はあります。古い作品となるとなおさらです。 できれば編集部でもチェックしてもらえれば助かるのですが……。資料の保存管理は個人がやるより絶対に多くの作品を扱えるわけですから。 でも漫画の編集さんが、必ずしも漫画好きでたくさん作品を読んでいる、というわけではありません。それどころろかまったく読んでいない、マンガ雑誌部門なんかやりたくなかった、なんて方もいらっしゃるのも事実。そんな現状ですから編集部は頼りになりません。 ある意味、避けようのないことだとも言えますが……。 「はーーーちから抜けたよ。最悪のシナリオ第2段階だよこりゃ……」 母ちゃんはがっくり肩を落としました。 無理もありません。 これでもう無実の主張はできない立場になってしまったんですから。 グレーゾーン入り決定です。 「でさあ、母ちゃん、今日のごはんなーに♪」 「…………………あのなぁ」 「な、なになになに…かーちゃ……」 「ウガオォォォ〜〜!!!」 「ひーーーん! ごめんなさーーーい! おこらないでぇ〜〜〜!!!」 最初とはまったく逆の立場に立たされたブタ丸父ちゃん。 自覚がないだけ幸せだけど……。 しかし、立場は悪化する一方だ!! ――どうなる?! ブタ丸一家! …… 「え〜と、おしりとオッ☆イ…チチが尻しり…しりチチ。う〜ん、hitしないねぇ〜〜」 ブタ丸母ちゃん、いつになく真剣な表情でパソコンに向かっています。 「……かーちゃん、なにミョーなキーワード検索してんの」 「あれ、ブタ丸いつ帰ったんだい? ただいまぐら言いな!」 「言ったよ! ちゃんと! …って聞けよ返事してんだから、も〜」 まったくモニターから目を離さない母ちゃんに、ブタ丸も少々あきれ顔です。 しかし母ちゃんは真剣そのもの。ブタ丸の話も聞かず、またミョーなキーワードを入力します。 「あーもー! 気が散るからあっち行ってな! こないだ父ちゃんのギャグの元ネタだって書かれてたギャグが、何に載ってたのか調べてるんだから!」 「ヘイヘイ」 昨日の盗作?!疑惑について書かれていた記事には、 「以前誰かが同じネタを描いたらしい」 というまた聞き情報しか載っていなかったので、母ちゃん必死にその「元ネタ」の作品を検索していたのです。 やはり、父ちゃんの盗作問題がグレーゾーンのままでは、どうしたって落ち着きません。 なんとしても、きちんと事実確認をして、何かあった時のための証拠固めをしておきたかったのです。 しかし手がかりが、 ――父ちゃんのお下品ギャグとおなじネタ だということだけなので、雲をつかむようで皆目分かりませんでした。 「あー、やっぱ無理か。ちゃんとチェックしときたかったんだけどねー」 あきらめ顔で、別のパターンでキーワードを入力しenterキーを押す母ちゃん。 すると……。 「ん?! ケツがオッ☆イでなんかhitしたよ! どれどれ…」 しかし残念ながら、そのホームページにも探していた情報は載っていませんでした。けれど記事はけっこう面白い内容でした。そこはトン太先生のニアミス事件について詳しく画像で比較検討したいわゆる「盗作検証サイト」だったのです。 記事は画像をたくさん使い、分かり易く検証した内容のしっかりしたレポートでしたが、「元ネタ」作品についての情報は、同じく以前別の作家がこのネタを描いたらしいという情報が付記して書かれているだけでした。 「ふーん……絵を並べてみると、ホントにそっくりだねー」 母ちゃんすっかり感心し、他の「盗作検証サイト」も色々調べはじめます。そして一通り見てまわった後「パクリ」に対する読者達の反応の厳しさを目の当たりにし、複雑な思いにかられていました。 父ちゃんの件以外にも、さまざまな「パクリ?」疑惑作品についての記事が、あちこちに載っています。(今回再検索してみましたがほとんどの記事がプロバイダから削除依頼などで削除されていました) 絵でもストーリーでも、少しでも似ていると「パクリ」と言う人がけっこういるようです。 でも、もともと作家が漫画を描きはじめる動機は、好きな作家や作品に強く触発されたというものがほとんど。 だから、似顔絵や模写から漫画の勉強を始めたという人は多いでしょう。 そこからオリジナルの絵を作り出すにせよ、ある程度なにがしかの作品の影響が絵やストーリーに残ってしまうのは当然のことなのですが……。 そういうこと全般を指して、 ――みーんなやってるんだ。だから作家はパクりに甘いんだよ。 と、断定する。 そんな発言もめだちます。 確かに触発し合い、影響し合う。そうやってみんなで育ててきたのが漫画文化。でも本当は、音楽にせよ文学にせよ、みんなで作り上げたものの事を文化というのですから、これはあたりまえのことなのです。一個人の突出した偉業は文化とは言いません。 なのに漫画だけ「みーんなパクリをやっている」という言われ方をしてしまうのは、まだまだ文化として成熟していない、認知されていない所以なのでしょうか。 ――それともホントにパクリが横行しているのでしょうか? 影響しあうこととパクリはまったく違いますが……… 確かに背景などに関しては、他の作品を模写したりすることはけっこうあります。昔手伝いに行っていたところでは…… (師匠のトコに行く前の話ですよ、これは!) ……背景描く時、他の劇画系の作家さんの作品を参考に使っていました。(オイオイ!) 何巻のどのページに何が描いてあるか、パッと分かるぐらい、そりゃーもう頻繁に利用させていただいておりましたデス。 あのころはあんまり素材集とかがなかったんです。そこで背景を描く時は、ポラロイドカメラを片手に駆けずり回って写真を撮ってきたりして、資料にしていました。けれどなんでも写真を撮れるわけではありません。そこでどうしても資料が集められない場合、もしくは時間がない場合など止むを得ずそういう手段をとっていたわけではありますが……いきおいそういうケースは頻繁にあるわけで……今思い出すと冷や汗モノですね。 広告写真の模写も……パクリだ!と糾弾されていましたが……することがけっこうあります。 商品によっては本に商品が載ると「宣伝ありがとうございます」って、品物を送って下さることがあるから(オーーーイ!)下心アリアリでわざと分かり易く商品を描くことも……。 実は私もこれ、試してみたことあります。 洋服の柄担当だったんですが、欲しいTシャツがありまして。 がんばって描きました! トーンも三重貼りにして、細かく、キレイに、何カットも! 苦労の甲斐あって、メーカーさんから届きましたよ! とっっっても丁寧な……お礼状(爆)!!! ――感謝するなら品をくれ!……ってか。 なんかこう書くと、何も考えずに人の絵をマネして描いていたようにとられてしまうかもしれませんが、それでも、トレスやコピーだけは決してしない、という当時の最低限のマナーは守って作画していたんですよ。 ――絵や写真を参考にしても トレスやコピーだけは決してしない 今でもその辺を“パクリ”のボーダーラインにしている作家さんが多いのではないでしょうか。 人物画にしても背景にしても、参考として他の作品を見ることはしても、トレスやコピーはせず、目で見てアレンジもして描く。 この辺までが、勘弁してもらいたいと思う描き手のボーダーラインなのですが、どうでしょう……? こういうことを、全部“パクリ”とするならもう問答無用、ほぼ全員“有罪”ですが……。 余談ですが、トラブルを回避するためにも、有料で会員制とかでもいいから、漫画用の使えるデーターバンクができるといいですねー。 とにかく、使える(ここ重要!笑)素材集は少なくて、こんな現象も起きてます。 →「漫画家業界で一番有名な建物」たなかじゅんのヨモヤマ日記より すこし話が横道にそれましたが、私はやはり「みーんなやってるんだ。だから作家はパクりに甘いんだよ」というのは、ちょっと違うと思います。 「パクリに甘い」というのは、マネされても文句を言う作家さんが少ない、ということを言っているのだとおもいますが……。 確かに漫画家の先生達はホントにあんまり怒りません。 でも、それはみんなやってるから……ではありません。 ほとんどの作家のみなさんは、きちんと自分なりのモラルを持って、プライドをもって描いていらっしゃいます。 うしろめたい思いを抱えて長く楽しく作品を描き続けることは、どこか壊れていないとできません。 ならどうして、こんなに色々パクリが話題になっているのに、大きな声をあげる作家さんがほとんどいないのか? いろいろ理由はあると思いますが、まず第一に、漫画家さん達のほとんどが、そもそもすご〜〜いめんどくさがり屋だということが上げられるでしょう。 縦のものを横にもせず、好きなことに全力投球してきた方々です。 苦情を出して、証拠を出して、話し合って……。そんなめんどうなことするくらいなら、黙ってパクられていたほうがマシ!と、考えてしまう方……多いですよ。 たいてい騒ぐのは周りの人間。アシスタントさんとかファンの皆さんですね。ウチもそうでしたが。 編集さんは例によって面倒ごとは嫌いますし。 あと、あまり騒ぎ立てない理由がもう一つ。 作品を書き上げたばかりの作家さんは、ものすご〜〜く描いたばかりの自分の作品に対して自信をなくしている事が多いんです。 父ちゃんなんかがこの部類です。 とんでもなくつまらないものを描いてしまったと思っています。 ですから、パクられたと聞いた後の反応の薄かった父ちゃんの心境を代弁すると 「こーんなつまんないオレの漫画をパクる人がいるわけないだろ、恥ずかしいから騒ぐの止めなさい!」 という感じになるのでしょうか。 パクルつもりはなくても、知らないうちにネタがカブっていることがけっこうある、というのも理由のひとつに上げられるでしょう。 今回の父ちゃんの場合もそうですが、白である証明も、黒である断定もできない……というケースがけっこうあるとおもいます。この場合は騒いでも水掛け論になり、双方が要らぬダメージを受けるだけに終わってしまうので、騒がないのが賢い選択でしょう。 ブタ丸家の騒動の後、ある少女マンガ家が、こともあろろうに井上雄彦先生の作品を使ってしまい大騒ぎになりましたが、あれは……多くの作家さんにとってもボーダー外と思われる、あからさまなやりかたでした。 大作家・井上雄彦先生の作品を使ってしまった作家に対する出版社の処罰は、とても厳しいものでした。本は絶版・回収。作家生命も終わりでしょう。 ――だがそれは本当に反省したから故の処罰だったか? という声が、事件の後あちこちで聞かれます。 似たような盗用のケースはちらほらあるのに、出版社はほとんど黙殺しているのですから、この疑問は当然でしょう。 正直あまり同情心は湧かないのですが、今回の父ちゃんの件もあります。ひとごとではありません。出版業界が守りたいものは、本当に作家の著作権なのでしょうか? 守りたいものが会社の“利益”だけなのだとしたら……とても悲しいですね。 ブタ丸母ちゃんは、おやつをバリバリ食べながら「盗作問題検証サイト」を読み続けています。 「なんかいっぱいあるねーパクリ周辺記事。基本的にみんなこーゆーネタ好きなんだよねー、やっぱ」 そう言う母ちゃんも結構好きだったのは確かです。 「ひとごとのうちはよかったんだけどねー、あ〜あ…この先なんか起きなきゃいいんだけど……」 数週間後、母ちゃんの心配をよそに事件はそれ以上騒ぎになることもなく、無事に連載も続けられていました。 もともと、こちらはそれほど売れている…っていうか、えー色々微妙なのではっきりは書けませんが、まあその…露出の少なめ?な本なので、話題性が少なかったのでしょう。 こういうときは助かりますね。弱小…アワワ…誌♪ 「へー、母ちゃんめずらしーな。れんあいドラマなんかみてるんだ」 ブタ丸母ちゃんは行儀悪く立ったまま台所でスイカをかじりながら、9時のドラマに見入っていました。 ![]() 「うん」 ブタ丸も台所で立ったままスイカをかじる。 落ち着いて座って食べれば良さそうなものなのですが、片付けることを考えると、果汁が飛んでも気にならない台所で食べてしまう横着なブタ丸母ちゃん。ブタ丸もすぐ手が洗えるのでテーブルで食べたがらない。 よく似た行動パターンです。さすが親子。 「おもしろいのこのドラマ?」 「お前どう思う」 「キモイ」 「……身もふたもないねー、まだ色気づかないのかね、この子は。まあさ、母ちゃんも恋愛モノは苦手なんだけどさ。高校の時の同級生が脚本書いてるんだよ。だからちょっと見てみてるだけなんだ」 「ふーん、すごいね。ごちそーさまー。フロはいってくる」 「はいよ」 実はこの脚本家さん、同級生同士で結婚したのですがその奥さん、母ちゃんの友達P子と、とても親しかったのです。けれど……。 名前が売れ出した頃、P子の文章をパクったパクらないでケンカになってしまったのです。 事の真相はよく分かりませんが、なんでも奥さんに送った手紙の文章を脚本のセリフに使ってしまったらしいのです。 P子はとても怒っていて、かなりいろいろ言っていました。浮気者の脚本家さんに振りまわされている奥さんを慰める手紙だったので、なおさら怒りが倍増している様子です。 手紙は相手にあげたもの、というイメージがあり、著作権があるのかどうかよく分からないのですが、断りなしに使ってしまったのは確かにマズイのでしょう。なんにせよ、間に挟まれた奥さんが一番大変そうでした。たぶん、 「こんなステキな手紙をもらったのよ」 と脚本家さんに手紙を見せたのも彼女でしょうから。 もしひと言ことわりをいれていれば、P子も快く文章を使うのを許してくれたでしょう。 人の作品を使う時にはやはりマナーがあると思います。 まず、絶対にしてはいけないのは、自分の作品のように装って引用してしまうこと。 漫画だったら、「○○先生ごめんなさい」と記しておく、キャラに「○○かぁぁ!」と突っ込ませて元ネタを知らせる、等々。工夫する必要があるでしょう。 父ちゃんとニアミスした作家さん、その辺が少し雑な気がします。 例の少女漫画家さんの事件の直後は、パロディが急に減っていたので、少し笑ってしまいました。編集部も神経質になっていた様子。もっとも最近ではもう元通りですが。 力のある雑誌に載っている作品がパロディをやる時は、十分気を使う必要があるでしょう。分かる人には分かる、という隠しパロディもマニアックでいいのですが、工夫して何かのパロディなんだなーと、みんなに分かるようにしておくのはメジャー誌の作品の義務だと思います。 とにかく同人誌ではないのですから。 それどころか彼の作品の載っている本は、少年誌屈指の発行部数を誇る最強誌の中の一冊なのです。今までは「○○先生ごめんなさーい♪」で済んでいたでしょう。でも今は強い立場。下手をすると「グフフフフ、いーモン持ってんじゃねーか!もらっといてやるぜ!」になっちゃいます。件の脚本家さんみたいに……。 そう言えば、カッコイイシーン、笑えるシーンを自分のアイディアのように使っておいて、なにかあったら「パロディですから」と誤魔化せるような作風にしている確信犯的な作家さん……昔いましたね。 救いは、そういう作家さん、あまり寿命が長くないって事ぐらいでしょうか。 そして、おもしろいアイディアを思いついた時の漫画家さんの、あのキラキラした表情を、そういう作家さんがすることもないでしょう。 自分の考えたアイディアでみんなに喜んでもらえる喜び、 それが作家の最高の報酬です。 漫画家さんがパクられてあまり怒らない1番の理由。 それは……… 「人の作品パクって、なにがおもしろいんだかね」 ――と、考えているからだと思います。 みなさん、漫画を描くのが大好きで 苦しみながらも一生懸命、 作品に取り組んでいるんですから。 その日の夕方。 「あれ、母ちゃん…なにぬりえしてんの?」 フォトショで楽しげに色塗りをしているブタ丸母ちゃん。 塗っているのは漫画にアニメに大人気の作品の主人公です。 「ブフフフ、ちょっとさ、ブログにupしよーと思ってさ、人気あるからねー♪」 「母ちゃん! それパクリだぞっっっ! い〜けないんだ〜!」 「な、なに言ってんだい! お、お金もうけしてないからいーんだよ! 雑誌にだって似顔絵のってんジャン!」 「え〜〜?! ダメだよそんなの!」 「それ言ったらね、アンタがいつもお絵かきしてる二次創作サイト、あれだってまずいんだよ!」 「が、がくせーがやってるから、いーんだモン!!」 「え〜〜?! ダメだよそんなのぉ♪」 「まねすんなよーーー!!」 低次元な口げんかを続けるブタ丸母子。 「はぁ〜〜、知的財産保護に対する意識は、 まだまだだよな、みーんな」 怖いので小さな声で呟き、ブタ丸父ちゃん2階に仕事に向かいます。 がんばれ、ブタ丸父ちゃん! 負けるな!トン太先生!! ≪今回の教訓≫ パクリに遭っても慌てず騒がず +++ 4.END +++
「アシスタントって……」 ――困ったアシスタントベスト3 です♪ お楽しみに! |