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父ちゃんのデビュー当時からのお友達のある作家さんがいます。
優しくて、人当たりもよく、絵もうまいし、父ちゃんととても気が合う方です。でも彼には欠点がありました。 とにかく何が何でも締切りが守れないのです。 日程にゆとりがあってもなくても関係なく、とにかく締切り前に原稿を描き上げた試しがありません……。 なのになぜか彼ににっこり微笑まれ 「大丈夫! 今回は必ず終わらすよ♪」 と、言われると――これが人柄というものなのでしょうか、ついみんな「今度こそ大丈夫かな?」と、信じてしまうのです。 ある意味最凶にタチの悪いお方です……。 ![]() 3.困ったアシスタントベスト3 ―― No.3来ない…… ―― <その2「やっぱり来ない」> ━━ 某年6月 ━━ 妊娠中もずっと父ちゃんの仕上げを手伝っていたブタ丸母ちゃんでしたが、さすがに妊娠後期ともなるとかなりお腹が大きくなってきます。もう長時間机の前で、お腹を圧迫するような姿勢で屈んで仕事をするのは危険です。そこで父ちゃんは、母ちゃんのピンチヒッターを探す事にしました。 「おー♪ ホントか? じゃあ頼むよパオ樹!」 「ハイ、コーヒーどうぞパオちゃん♪ 父ちゃん、頼むよってどうかしたのかい?」 「パオちゃんが今月仕事手伝いに来てくれるって!」 「おやまー、そりゃ助かるよ。パオちゃんだったら腕は確かだし、父ちゃんとはツーカーだからねぇ。じゃあ頼むわね、パオちゃん!」 「オウ! 任せとけ! オレの仕事終わったらすぐこっちの手伝いにまわるから」 それを聞いて母ちゃんの眉間にピシッと皺が刻まれます。 「パオちゃんも月末締め切りあるの?」 「うん。でもこっちの締め切りと1週間近くズレてるから大丈夫だよ! ね、パオ樹」 「あはははは、約1週間もズレてるからね、いくらオレでもこっちと被りゃしないから」 「あ、そうなんだ……」 そう聞かされても、いまいち不信感が拭えないブタ丸母ちゃんです。 なんせパオちやん締め切りを守らないことにかけては以前から定評があり、有名な武勇伝も持っています。そのエピソードは後日「締め切り」てついての章でご紹介しましょう(笑)。 「とにかくパオちゃんアテにしてるんだから絶対頼むわよ! もう臨月近いからアタシャ仕事は無理だからね。もしアンタが来れないでアタシが仕事する事になって、赤ちゃんになんかあったら……笑い事じゃすまないんだからね!」 ![]() 「分かってるよ、ブタ美さん! 親友の奥さんをそんな目にあわせたりしないよ。やるときはオレもちゃんとやる! アテにしていいよ!」 そこまで言ってもらえて、ブタ丸母ちゃんやっと胸をなで下ろしました。 いくらなんでも親友のこんな大事な局面。 しかも、一週間の余裕。 ――これは信用しても良いでしょう。 「ありがとう、パオちゃん! 頼むね!」 「おう!」 …… ――締め切り10日前。 パオちゃんの締め切り日は3日後です。 「で、やっぱワン田さん無理なの?」 「ウン、自分の仕事が手いっぱいなんだって」 「そうか〜、じゃあしょうがないねぇ。一応担当さんに声かけて、誰か探しておいてもらった方がいいんじゃない?」 「う〜〜ん……」 頼むね、とは言ったものの安全策は講じておきたかった母ちゃんですが(笑)……今回は残念ながらいつもアシスタントを頼んでいる腕利きのワン田さんをはじめ、皆さん予定が入っていて、来てくれる方が見つかりません。 「担当さんに頼んでさー、もし人がみつかっても使えるかどうか全く分かんないしな〜。下手な人だと足引張られる恐れがあるからさ、急なときは逆にあんまり頼みたくないんだよね〜」 「そりゃそうだけどさ……」 「大丈夫!パオちゃんが来てくれるって言ってくれてるんだからアテにしてようよ」 「そうかい? まあ父ちゃんがそう言うなら……信じてみるかね。まあさー、いくらなんでもこの局面で親友を裏切ったら人として大問題だもんね! 信じてあげないとね!」 「うん♪」 「でも、父ちゃん、一応進み具合どうか電話入れてみて」 ――全然信じてないじゃん……。 「母ちゃん、パオ樹の原稿着実に進んでるって! 安心した?」 「そう……ならいいけどさ」 さすがの疑り深いブタ丸母ちゃんも、やっと安心しました。 パオ樹ちゃん、親友のためにいつになく頑張って仕事をこなしているようです。 (――なんか散々疑って悪かったわね……男の友情を妻が信じなくてどうするんじゃい! ゴメン! パオちゃん!!!) 目頭を熱くして母ちゃん寝室に向います。 「あーヤレヤレ、妊婦は疲れるよ。昼寝しよ〜っと♪」 妊娠してなくても、しょっちゅうお昼寝してるんですけどね……。 ――締め切り5日前。 パオちゃんの締め切り日は2日前でした。 「さっきパオ樹に電話したらさ、原稿もうすぐ終わるって」 「アハハハ、やっぱ原稿遅れたんだ。パオちゃんらしいよ! まあこっちは締め切り2日前に来てもらえればいいからね。間に合うでしょ♪」 「母ちゃん……パオ樹を信じてくれたんだ!」 「だって父ちゃんの親友だもんね、信じるよ!! アタシャちょっと反省してんだよ」 「母ちゃん……!」 「まあ、ココアでも飲みな、父ちゃん♪ はいどーぞ!」 「ありがとう♪」 ――締め切り3日前。 パオちゃんの締め切り日は4日前でした。 「さっきパオ樹に電話したらさ、原稿遅れてるけどもう後ちょっとなんだって」 「アハハハ、そ、そうなんだ……。パオちゃんらしいよ! まあこっちは明日来てもらえればいいからね。大丈夫だよね♪」 「あはははははは……そーだよね」 「じゃ、コーヒーでも飲んで頑張ってね」 「あ、ありがとうございまーす」 ――締め切り2日前。 パオちゃんの締め切り日は5日前でした。 「さっきパオ樹に電話したんだけど…もうちょっとだけまってね〜って言ってた………」 「アハハハ……ってさ、笑えないよそろそろ! 今日来てくれるはずだったじゃん!」 「背景は全部自分で頑張って描くからさ、明日でも大丈夫だよ。も、元々母ちゃんの代わりに仕上げやってくれる人探してたんだしさ」 「ちゃんと来てくれなきゃ、シャレになんないんだけど、大丈夫なの?」 「もし来れなくなったなら、もっと前に連絡くれるよ、普通。こっちが大変なの知ってるんだし。だからさ、大丈夫だと思うよ」 「………とりあえずお茶でも入れるよ。背景がんばってね」 「う、うん。死ぬ気でやるから!」 ――締め切り1日前。 パオちゃんの締め切り日は6日前でした。 「今電話したんだけど……パオ樹………来れないって………」 「ぬわんだって〜〜!!!!」 「ご、ごめんなさ〜〜〜い………」 「しかもこっちが大変なの知ってるのに、事前連絡なしかぁぁぁ! 今からじゃ代わりの人も探してる暇ないじゃん!!!どーすんのよっ!!!」 「どどど…どーしよう」 「背景は終わったの?!」 「あとちょっと……」 「まだ終わってないのね! 仕上げには丸1日かかるのに……しかたない」 「……母ちゃん?」 「アタシが手伝うよ!」 「で、でも……」 「お腹に負担がかからないように、短時間でチョッ速で仕上げるから! 父ちゃんもそのつもりで頑張んなっ!! はあ? ノド乾いた? 水でも飲んどきなっ!!」 「はははは、ハイっっ!!」 「もしこれでお腹の子になんかあったら、パオ樹、3枚に下ろしてやるから、出刃包丁も研いどきな、父ちゃん!!!」 「ヒィィィィィィ〜〜〜恐いよ母ちゃん〜〜〜」 「気合いだぁぁぁぁ!!頑張ンなっっつ!!!」 「は〜〜〜い」 ――締め切り日。 パオちゃんの締め切り日は1週間前でした。 「母ちゃん、無事原稿終わりました。ご協力ありがとうございます」 「ウッシャ!」 短時間で仕上げを終わらせ、体の負担を最小限に抑える事ができたので、幸い母ちゃんの体調には何の変化も起きませんでした。 編集部からのバイク便に原稿を託し、ホッと一息いれていると電話が鳴りました。 「もしもし〜あ、パオ樹!」 「なんだい! お詫びの電話かい? 母ちゃんメチャメチャ怒ってるって伝えときな!」 「……パオ樹、原稿落ちそうだから手伝ってって……」 「ハア?! なんじゃそりゃっ!」 ――手伝いを頼んだはずが、結局いそいそ逆に自分が手伝いに行っている父ちゃんでした。 どうしても締め切りが守れない……こういう症状は病気みたいなもので、どんな状況になろうとなかなか治らないようです。 でも人の良い父ちゃんです。 パオ樹くんとの友情はまだ続いています。 まあ、父ちゃんがいいなら、それでいいんですけどね。 なんだかな〜〜(; ̄ω ̄A ≪今回の教訓≫ 普段アテにならない人は イザとなってもアテにならない ―― つづく ―― 「困ったアシスタントベスト3」最終話 「来させない」です♪ お楽しみに! |