「ブタ丸トントン・ジュニア版」2ページ
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 額(ひたい)「死」の一字を刻(きざ)んだおどろおどろしいキューピーが、
 深紅(しんく)の邪眼(じゃがん)を光らせ闇の中に立っていた。

 ブタ丸は一瞬心臓が飛び出しそうになったが、
 持ち前のクソ図太(ずぶと)い神経ですぐ立ち直り、
 でかい態度で左手を上げ、かたちばかりのあいさつをした。

ホラーキューピー画像 びっくりブタ丸画像

 「よう、じゃまするぜ」
 ……ゴリラの次はブタか、今日は珍しく客が多い日だな……

 仮にも力だけは類人猿最強(るいじんえんさいきょう)を誇(ほこ)
 マウンテンゴリラを相手にバトルした直後にもかかわらず、
 ホラーキューピーは呼吸一つ乱(みだ)していない。
 まるで何事もなかったかのようにたたずんでいた。
 ただ筋肉質の胸に斜めにはしる深い傷の跡だけが、
 彼の壮絶(そうぜつ)な半生(はんせい)を無言(むごん)で語っている。

 ブタ丸は思った。

  奴なら、いける!

 「おいホラーキューピー、話があるんだが」
 なに?
 「今度のサバイバル大会で優勝すると
 5000000000000000000000000円がもらえるらしいぞ」
 な…なぬーーーーー!?
 「でる?」
 でるでるでるでるっ!

 ……外見の割に俗っぽいキャラだぞ、ホラーキューピー。
 お金にでも、こまっているのだろうか?
 「でるためにはオレのチームに入らなきゃいけないんだが、入る?」
 O・K
 ホラーキューピーが仲間になった!
 「よし、今度は象の馬場(ババ)ールの家に行くぞ。
 体のデカさとパワーじゃオレの知るかぎりじゃアイツが一番だ」

 しばらくして、二人は馬場(ババ)ールの家に着いた。
 真っ赤な屋根のメルヘンチックな家だが、
 象の一家の住む家なのでやたらデカイ。
 デザインはメルヘンでも可愛げもへったくれもない
 …てゆーか、そもそも全体が視界に収(おさ)められないので、デザイン意味なし、だ。
 「おーい、馬場(ババ)ール! ……ん? いねーのかな〜〜」
 誰もいない居間では、つけっぱなしの大画面テレビが
 観る人もないのに昼メロ女優の大熱演を映(うつ)し続けていた。

 もう、行っちゃったらしいよ
 ホラーキューピーがテーブルの上の書き置きをみつけ、ブタ丸に知らせた。

 「なにーーーっ!!」
 さばいばる大会に行きます。ボクの分のごはんは、
    あとでチンして食べるから、れいぞうこに入れといてね♪ ママへ 馬場ール

 「あいつ〜〜〜、賞金ひとりじめする気だな!
 大会で会ったらたたきのめしてやる!!」

 強力な戦力を仲間にすることができず、予定の狂ったブタ丸だが、
 気をとりなおし次は友達のエジモンの家に行くことにした。

 エジモンの家は町の準工業地区(じゅんこうぎょうちく)の、
 何てことはない住宅地の真ん中あたりにある。
 ブタ丸はありがちな住宅地の、ありがちな古くも新しくもなく、
 大きくも小さくもない、とにかくふつーの一軒家の前を
 行き過すぎかけて、あわてて駆け戻った。
 表札(ひょうさつ)には江寺田(えじた)と書かれている。

 「おっといけねー、ここだ、ここだ!
 あんまり特徴(とくちょう)ない家だから、
 いっつもつい行き過ぎちまうぜ」
 おいブタ丸、本当にこんな家に強い奴が住んでいるのか?
 「ああ、家も本人も一見特徴(とくちょう)がなく頼りないが、
 あいつはいざとなったらやる男だ。ーーーいろんな意味で、な」

 ブタ丸は口に手を当て、二階の窓へ声をかけた。
 「モン吉君♪ あそびましょー♪」
 エジモンはブタ丸の幼おさなじみらしい。
 アナクロな誘(さそ)い文句にすぐに返事が返ってくる。
 「あ〜と〜でー」

 ……おい、あとでって言われてるぞ
 「大丈夫だ、まかせろ。モン吉君♪ バナナあるからあーそーぼー!」
 …………おい

 引き気味のホラーキューピーをよそに、
 二階の窓がスッと開き、茶色いサルが顔をのぞかせた。
 エジモンだ。



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