シナリオ「ジャンク!」1
2004.5 完成 2005改稿 400字×60枚(ペラ120枚)
このシナリオは、2004年にアニマックス大賞に投稿した新・カテゴリー、ロボットレースアクションストーリーです(なんじゃそりゃ?)。もちろんおもいきり落選いたしましたが(^^ゞ…よろしかったらモノは試し…と一読してみて下さいませ。登場人物、ロボット達、みんなの元気だけが取り柄の作品です。
○CG画面
ロボットのI・Cチップ(バイオ・ナノ・プロセス素子)のCGへフェードイン。
バックにテレビの音声が流れている。
○匠家・半地下工房(夕方)
I・Cチップから内部メカへ、拡大鏡を覗き込むマサトの父匠博正(40)の厳つい手へと順に画面引く。
拡大鏡を覗き込みながら作業台の上の犬型ロボットを修理する博正。パソコンモニターのサブ画面に、テレビコマーシャルが映っている。
女子アナのN
「ジェネシスのフレンドリーロボット(Fロボ)は、お子様の情操教育に役立つ友人として、また頼りになるボディガードとして、我社が自信をもってお届けする皆様のライフパートナーです」
種々雑多なロボットが転がり、器材、コード類が雑然と積み上がっている室内には、ドライエリアのサッシから黄金色がかった陽光が差し込んでいる。
作業台の上には、あちこちショッキングピンクの染みの焦げ付いた犬型ロボットが、仰向けになり舌を出し腹部を開かれて横たわっている。
画面に回転する子供型ロボットの映像。
女子アナのN
「大人気フレンドリーロボットJ・Bシリーズに、G4ニューロコンピューター搭載のハイグレード・モデルが新登場しました! しかもお値段据え置きの180万円から!」
部屋の隅にマサトのパソコンデスク。
どこかで見た白いロボットの頭部のようなデザインの、自作一体型パソコンが乗っている。
その上には小さなロボ猫が尾を揺らし丸くなって眠っている。
壁にピンでポスターが張り付けてある。ポスターには疾走するロボットの写真と「ロボット・バトル・スプリントG・P、参加チーム募集中!」の文字。
× × ×
一階でバンッと玄関のドアが開く音。
続いてドタドタと階段を駆け降りる音。
作業部屋の前で足音は止まり、一呼吸置いた後、そっとドアが開き匠マサト(12)が満面の笑顔で入ってくる。
マサト
「たっだいまぁ! お父様ァ♪」
嫌な予感で一杯になり、博正は顔をゆがめ覗き込んでいた拡大鏡から顔を上げる。
博正
「……あんだよ気色悪りィ声出しやがって」
マサト
「ウ〜ン、とぼけるなんてお父様のイ・ケ・ズゥ! 特許使用料入ったんだろ! 一生のお願い〜Fロボ買ってよー! 中古でもいいからさぁ! チームで持ってないのオレだけなんだモン」
顔をそむけ舌打ちする博正。
博正(M)
(特許使用料だァ? チッ、どこでそんな情報仕入れてきやがったんだ……)
博正笑顔で振り返り、筋肉質の腕を水着グラビア美女よろしく内側に絞り、セクシーポーズをとると、息子に負けず鼻に抜けた声でシナをつくる。
――かなりキモい。
博正
「ごめーん、ツケ払ったらお金無くなっちゃったァ♪」
マサト
「う、うそつきやがれ! ジェネシスの仕事がそんなにショボイわけないだろっ! ……あーっ! また、なんか自分の物買ったなーっ!」
慌てて部屋を見回すマサト。
種々雑多な機材がところ狭しと置かれた室内の片隅に、電子レンジ程の大きさの新顔のメカが、もうセットされちょこんと置かれているのに気付く。
マサト
「……ZENの新型ナノパーツ・モルダーじゃん。これ一台でFロボが二、三体は……(博正を睨み付ける)こらぁ〜っ、このクソ親父ィ! 家計費の赤字補填だってしなきゃなんないのに!」
博正
「仕事で使う道具だ」
マサト
「オリジナル・ナノパーツ使うような高級な仕事、まったくしてないじゃんか!」
みるみる顔色の変わる博正。
マサトは地雷を踏んでしまったらしい。
博正
「じゃかましーっ! 誰に喰わせてもらってると思っとるんじゃいっ! 仕事の邪魔じゃーっ、出ていけー!」
人工毛を逆立て逃げるロボ猫。
マサトも大慌てで部屋を飛び出す。
○ジャンク屋裏雑木林(夕方)
シルエットになった木々の葉の向こうに夕焼け空。
高く積まれたジャンク屋の産廃のボタ山の上をうろつくマサト。
マサト
「あーあ、やっぱFロボなんて埋まってるわけないよなー」
足元のゴミを蹴り飛ばすマサト。
マサト
「くっそーあのドケチ自己チュー親父、いっつも自分優先なんだから! 臨時収入あったときぐらい、この歳で家事全般引き受けてる孝行息子の、一生のお願いきいてくれてもいいじゃんかよ!」
三本足のワークロボットに乗ったジャンク屋の親父(65)がボタ山の向こうから現れ、マサトに気付き声を掛ける。
ジャンク屋の親父
「よーう、マサト! なんかお宝掘り出せたかぁ? 野ざらしのジャンク品は何でもキロ百円で持ってっていいからな」
マサト
「ダーメ、収穫ゼロ! 最近景気悪いから、使えるモンはケツの毛までムシられてるよ」
ジャンク屋の親父
「ハハハハ。あっちの山見てみたか? ほれ、なんてったっけ? あーボケてきたなー……トップロボットメーカーの……そうそう、サン・ロンバス社! そっからこないだ出たばっかりの産廃があるぜ」
マサト
「ホント? ありがと、おっちゃん! ちょっと見てくる!」
ジャンク屋の親父
「気ィつけろよー。転ぶと埋まるぞー」
マサト
「分かってるー」
走りながら手を上げるマサト。
しかし言っているそばからよろめき倒れかけ、手をついた山がガラガラ崩れ出す。
冷や汗をかくマサト。
○同・ボタ山(夕方・大分暗くなっている)
先程の場所とは違い、足元には新しいジャンク品が積み重なっている。大きな器材も無造作に転がっている。
嬉しそうにごそごそとあちこち物色しているマサト。
マサト
「おー、ナノチューブシート!(巻き残りのシートを拾い上げる)さすがサン・ロンバスお大尽だなー」
シートをズボンのポケットに突っ込もうとしてよろめくマサト。
ドン! と横にあった大型ドラム型洗濯乾燥機の背面に倒れ込む。
衝撃で洗濯機がバンッと開き、何かが転がり落ちる音がする。
変な声
「ウブブブブ〜〜!」
マサト
「……? な、何だ?」
恐る恐る洗濯機の後ろを覗くマサト。
薄暗がりに布でグルグル巻きにされた中華童子人形の首が蠢いている。
マサト
「うわああああ〜〜〜!」
尻餅を付くマサト。
中華童子人形
「アブエベクベェ〜〜ッ!」
マサト
「……? た、す、け、て、くれ?」
ブンブン首を振り、うなづく人形。
ビクツキながらも、陶器の人形の首と猿ぐつわを外してやるマサト。
中からやたら悪戯っぽい顔のFロボ(フレンドリーロボット)が現れた。小柄な体は、毛皮や絨毯(高級品らしい)金属板、鎖やらで身動き取れない程厳重に巻かれている。
J(ジェイ・Fロボ)
「プハ〜〜〜ッ、あークソやばかった〜っ! このまま埋もれて潰されちまうかと思ったぜ〜〜!」
マサト
「……何してンの、君」
J(ジェイ)
「何してる、だあ〜〜? 見りゃー分かンだろーが、見りゃ! ボケッ!(視線を逸らし少し恥ずかし気に)…簀(す)巻きになってンだよっ!」
マサト
「簀巻き? これが簀巻きかぁ……。ふーん、初めて見た、本物」
J(ジェイ)
「ふーん、じゃねーだろっ! スットボケた事言ってねーで助けろっ! クソボケ!」
マサト
「めちゃ、口悪いロボットだなー。何して簀巻きにされたの!」
Jの髪に付いたゴミを取り、指で頬の汚れを拭いてやるマサト。
マサト
「待ってな、今おまわりさん呼ぶから(腕の携帯パソコンに指を走らせながら)落とし物は警察に届けないと」
J(ジェイ)
「落とし物ォ? 落ちてるって言うのか、この状態! どー見ても違うだろーが、ドアホ!(だんだん小さくなる声)捨てられたんだよ、オレ……」
ハッとして真面目な表情になるマサト。
マサト
「捨てられた……って、ゴミと一緒に?」
うつむくJ。
× × ×
(インサート)
テレビ画面。悲し気なBGMの流れる中、微笑む美少女女優ヤワリン(16)。
ヤワリン
「ロボットは私達の大切なライフパートナーです。不要になっても捨てたりしないで、メーカーに御連絡を!」
N(ナレーション)
「ロボットの不法投棄は止めましょう。JRCからのお願いです」
× × ×
マサト
「……ってテレビでヤワリンも言ってるのに、モラル無いなー」
J(ジェイ)
「……ヤワリンって誰よ。何でもいいからほどいてくれよ〜〜っ、このままじゃホントに粗大ゴミになっちまう〜〜」
マサト(M・モノローグ)
(粗大ゴミ? そうか! じゃあ、このFロボって……)
マサトの背景に大きく光る“お宝”の文字。
手を組み目が星になっているマサト。
マサト
「神様ッ♪ ありがとうございます!」
Jに飛びつき抱き締めるマサト。
J(ジェイ)
「お、おい、何だよ」
マサト
「捨てられたんならさ、オレんち来いよ! 歓迎するぜ!」
J(ジェイ)
「え? いいのか? 簀巻きにされてるよーなロボットなんだぜ?」
マサト
「うんっ! オレ中古で多少変なクセついてても気にならないし」
J(ジェイ)
「へ、変なクセ?」
マサト
「マニュアル落ち、備品落ちの不揃い品で保証なくても、親父プロだから安心だし、オレもメカ強いからさー、大船に乗ったつもりでいてくれよ!」
J(ジェイ)
「備品落ち? 不揃い品? 保証なし?」
複雑な表情のJ。額にムカマーク。
構わず壊れたショッピンクカートを掘り出し、重みによろけながらもサクサクJを載せるマサト。
マサト
「やったー♪ やったぜ! キロ百円でFロボ手に入った〜〜!」
J(ジェイ)
「おいっ! キロ百円ってなんだ〜〜? 拾ってもらって何だが、なんかめちゃくちゃひっかかるぞーっ!」
マサト
「一緒にバトル・スプリント・レースに出よーなっ♪ オレ、ロボット専科クラスのチームでメカニックやってんだぜ!」
J(ジェイ)
「おーい、お前、人の話全く聞ーてねーだろっ、コラッ! レースって何だよ〜っ! うわっ、気ぃーつけろよっ、埋まるううう〜っ!!!」
あちこちバラバラ崩れるボタ山の間を危なっかしく走り抜けて行くカート。
悲鳴をあげながら飛び跳ねるJ(ジェイ)。
明かりの灯る住宅街の方へ走り去るカート。